公団市街地住宅生活日記 その4「リノベーション、いやリニューアル住宅に暮らして」
公団市街地住宅生活日記
その4「リノベーション、いやリニューアル住宅に暮らして」
1967竣工の、うちのビル。
URのリノベーション、いや「リニューアル住宅」の対象として、間取りの変更や設備ほか仕様のグレードアップが一部の部屋で行われている。
URによるリニューアルは、
国交省の住宅宅地審議会答申(平成12年6月)、公団基本問題懇談会報告(平成13年3月)等における、
「少子・高齢化の進行等を踏まえ、公団は、既存賃貸住宅ストックの再生・活用計画を策定し、設備水準が低い住宅や狭小な住宅について、老朽化の状況、立地等に応じて、居住者の居住の安定に配慮しつつ、計画的なリニューアルや建替えを実施すること。」
との意見を受け、平成13年に平成13年度から平成17年度までの5年間を計画期間とした『ストック再生・活用計画』にもとづき行われている。
(参考:「ストック再生・活用計画」について http://www.ur-net.go.jp/press/udc/H13nendo/stock/)
『ストック再生・活用計画』では、「ストック改善事業」として、
「昭和40年代から昭和50年代前半までに供給された住宅を中心として、土地の高度利用が既に図られているもの、建替えまでに相当の期間を要するもの等について、居住ニーズの多様化等に対応するため、既存の建物を有効に活用して行うストック改善事業を実施する。」とある。
(参考:ストック再生・活用計画 http://www.ur-net.go.jp/press/udc/H13nendo/stock/stock-03.html)
具体的には、建て替え事業などの推進のほか、現在住んでいる市街地住宅でも実施された「増改築事業」の推進が行われている。
そして、この増改築事業が「リニューアル住宅」という名称で呼ばれている。
URホームページでは、「リニューアル住宅について」として以下の説明を行っている。
『かつて日本の住まいは、和室をいろいろ組み合わせて、多様に使う暮らし方が中心でした。
しかし、時代と共に家族のパブリックスペースと個室とを使い分けるスタイルが多くなっています。そこで間取りでは、リビング・ダイニングなどに変更すると
ともに、長寿社会に対応したバリアフリー化を進め、水廻りなどの設備についても、時代のニーズに対応できる水準を目指しています。』
(参考:UR都市機構 【賃貸】 リニューアル住宅について http://www.ur-net.go.jp/kyojyusha/renewal/renewal.html)
うちの部屋では、おそらく以下のメニューが実施されたと思われる。
①リニューアル
LDK化・洋室化等の間取り改善、バリアフリー化等の住宅性能の向上を図る改善を空家発生時に行う。
②ライフアップ
住戸内設備水準の向上を図るため、キッチンシステム、大型浴槽、及び洗面化粧台の設置を推進する。
今住んでいる部屋の当初の間取りは、日本住宅史にも名を残す51C型、そしてその系譜を受け継ぐ2DK55型の流れを汲んだもので、2部屋とダイニングキッチンの3室構成となっている。
食べるところと寝るところの分離、さらに2部屋作ることでプライバシーも確保という狙いのもの。
下記URホームページで紹介されている図面の間取りとよく似ている。
(UR都市機構 【賃貸】 リニューアル住宅について http://www.ur-net.go.jp/kyojyusha/renewal/renewal.html)
しかし、限られたスペースで上記条件を確保するために、あちこちにしわ寄せが出ていた。
例えば、玄関のドアを開けるといきなりダイニングテーブルがある。無理に2部屋つくったので1部屋あたりの面積が狭いという具合である。
それでも、あこがれの団地生活だったのである。
しかし、家族を対象としていた住まい手像も、近年大きく変化し、家族向けのニーズに応えられなくなってきていた。
一方で、単身や夫婦2人といった住み方にも対応できていなかった。
そういった課題に対応するために、単身や2人世帯などでも使いやすいよう間取りの改変が徐々に行われている。
実際うちのビルでも、高齢2人住まいや、自分と同じような単身者、若い夫婦のみといったタイプが少なくないように思う。
具体的にみると、うちの部屋では、以下のリニューアルが行われている。
①LDK化
かつてのダイニングキッチンと隣接する部屋の間の壁を抜いて一続きにするLDK化が行われている。
さらには市街地住宅ならではのサンルームも、間にあるガラス戸を取り去り、床を張ることでLDKと一続きにしている。その名残で柱と梁が少々変な位置にあるように見えてしまう。
一方で玄関部分には壁が新たに作られ、LDKと玄関部分の分離が図られている。
LDKと一続きになった元サンルーム。
こうした生まれたLDKは広々として気に入っているのだが、
なかなか無茶な改変をしているので、暮らしてみるといろいろなことに気付く。
・梁まで高さ170cm弱のため、大きい人は頭がつかえる。
・柱と梁の位置のせいで窓際の空気周りが悪い。(エアコン効率、湿気)
・本来サンルームにあった金属手すりが室内にある。夏場の蓄熱により高温となり、室内温度を上昇させる。
まあ普通の賃貸住宅には無い魅力のぶん、普通の賃貸にない苦労も少々ある。
②和室の洋室化
もう一部屋は、以前は和室だったものが洋室に変更されている。
畳があったところにフローリングが貼られている。
フリーリングの材質もなかなかええ感じのところが、さすがUR。
ちなみに押入は今風のクローゼット風の観音開きになっているものの、中は昔の押入の二段構成のまま。
なお、洋室化の実施は、リニューアルレベルなどによってまちまちのようで、
入居前に見学した別の部屋は和室のままだった。
ここは好みが分かれるところかもしれない。
③洗濯機スペースの設置
旧間取りには洗濯機の設置スペースが無い。
調べてみると1967年には8割近くの普及率であるが、間取りに組み込まれていない。
60年代に急速に家庭に普及するものの、公団の標準規格はその変化に追いつけないままだったのだろうか。その辺りの事情は分からない。
どうしているのかと、入居前にお住まいの方に聞いてみたところ、
「洗濯機の足に車輪を付けて、洗面所の隅っこに置いてる。使うときには移動させる。」とのことだった。
これでは、さすがに使い勝手悪いということで、
リニューアルが実施された部屋では洗濯機の設置スペースが新たに設けられている。
そのスペースの作り方にも試行錯誤が感じられる。
上記②に示した元和室にある横幅2750mmの押入れを幅2000mmに狭め、空いた750mmほどのスペースを確保する。その後、その空間の奥の壁を取り去って、水回り空間と一続きにし、元和室側には新たな壁を設けている。
水周りスペース側から元和室のスペースをくり抜いた格好になっている。
このおかげで洗濯機はぴったりと納まってくれている。
ただ、そもそも洗濯機を置くことが想定されていないということで、洗濯機の排水用の設備は無い。
そのため洗濯機使用時には、排水ホースに延長ホースをつなげ、1450mm離れた浴室の排水溝まで引っ張って排水をする必要がある。
浴室入口の左下には排水用ホースの差込口が用意されている。
浴室入口の左下には排水用ホースの差込口
なかなかアクロバティックな排水方法なので、水漏れ事故はよく起こっている模様。
ビルの掲示板には、5階で水漏れが発生し、4階のオフィスに被害を与えてしまったという、市街地住宅ならではの事例紹介とともに、注意喚起が促す張り紙が貼られている。
細かい改変はまだいろいろあるけれども、
リニューアルのざっとした内容はこのような感じになっている。
もともと想定されていた住まい手のニーズからは大きく変わり、
家電の普及や関係法令の変化などの社会的な変化も大きい。
そういった中で元の間取りをベースにしながら何とかやっていこうということで、いろいろと限界はある。
ただそこに、技術者の工夫や、現場の施工の職人さんらの工夫が感じられるところがなかなか楽しい。
さらには、これまで当たり前のように享受していた機能や要素が無いことに気付き、改めて戦後日本の集合住宅の進歩の歴史を学ぶという、もはや一般には理解されない楽しみも生まれてきた。
日々いろんな発見がある、いい部屋や。



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